「知りたい」という欲求が人生を変えていく マリー・キュリー

f:id:bcis014:20230410162435j:image

まただいぶ時間空いてしまった…3月の観劇記録3作目はマリー・キュリーです。元々2023年3月は何作品か観劇予定があったので観る予定じゃなかったんですが、公演が始まってからあまりにも方々からの評判がよくてですね、スケジュールと睨めっこをして当日券でチケット取っちゃいました。

知的好奇心(という名の勢い)でチケットを取った当時の自分に言いたいのは、その選択大正解だよーー!!ってことです。個人的には合う作品も合わない作品も自分の目で観劇することの意味は大きいと思ってますが、マリー・キュリーについては行ってよかったの一言に尽きるし、あんなにマスクびしゃびしゃにして泣きながら拍手したの久々だった。

ストーリーについて

かの有名なキュリー夫人を描いた作品とのことでざっくりストーリーは確認しました。近年シスターフッド的要素を描く韓国作品も多く、本作も韓国ミュージカルが大元なので注目していた要素でしたが、主軸にある“女と女の物語”がとにかく良かった!!それぞれ未来のために進む2人の女の運命が偶然にも交わり、再会のたびに加速していくストーリーがまさに化学反応のようなバランスのおもしろさで。

さらにもうひとつの軸として魅力的な要素だったのが夫であるピエールとキュリーの関係性です。こちらの描き方も素晴らしくて、お互いを研究者としてリスペクトしあいながらも信頼と愛を積み重ねていく様子が丁寧に描かれていた。

事実も織り交ぜたドキュメンタリーという要素については、フィクションの部分もあれど当時のマリー・キュリーの境遇を思うと胸がぎゅっとするシーンがいくつもあった。その一方でラジウムという毒にも薬にもなる元素を発見したマリーの功罪をしっかりと描ききったのは素晴らしいなと。

キャストについて

愛希れいかさんお初!ちゃぴさんって愛称がかわいいな〜と思ってた。なんといっても彼女のマリー・キュリーですよ。
女でポーランド人である彼女に対して周囲の男性たちから放たれる「なぜやるのか(科学を)」の問いに見え隠れする“女でフランス人でもないのに”という意識が辛くて辛くて…。
彼女の答えは至ってシンプルで「知りたい」のたった4文字なのに、彼らは優秀さではなく彼女の出自や性別しか見ていないわけです。だからこそマリーの言葉が最後まで頭に残る。

私が誰かではなく、何をしたかをみて

彼女が見つけたラジウムの素晴らしさもラジウムのもたらした悲しみも含めて、自分が何をしたか、何ができるかを己の人生を賭して体現してくれたマリーに魅せられました。

清水くるみさんは昨年のヘアスプレー以来。声質が特徴的でかわいらしい印象なんですが、どんな時も明るいアンヌの役柄にぴったりだなあと。ちゃぴさんとのナンバーでの掛け合いも良い…!

屋良さんのルーベンはその悪役感にも負けぬ圧倒的なダンススキルで、彼が出てくる場面ごとに一観客として魅入ってしまった。ダンスで迫力を出すのすごいなと思う。

そして上山さんのピエール。観劇前はマリーの夫という認識だったけど、献身的にマリーを支え寄り添う姿をみていて、アンヌと同様にマリーにとって重要なキャラクターだなと。彼から紡がれる優しい言葉たちがマリーを救ってきたんだろうなというのが感じられた。

ナンバーについて

あなたは私の星、とてもとてもよかった!!真っ暗な舞台で星のように輝くラジウムが皮肉のように美しくて、マスクを濡らしたよ。
マリーとアンヌ、自分自身が輝いているかはわからなくてもお互いに“あなたは輝いているよ”と教えてくれる存在に出会えてよかったなとあのナンバーを聴いた時に感じた。
星は自分の輝きに気付けなくても隣にある星の輝きには気付けるのかな、そうであってほしいと願いたくなるようなナンバーでした。

「知りたい」という欲求を絶やさずに

本作のストーリーの軸にあったのは主人公マリー・キュリーの「知りたい」という欲求でしたが、今回私が作品を「観たい、知りたい」と感じたのとなんだか重なる部分があり、人生どんな作品とどんなタイミングで会うかわからないなあと。
大人になってできるだけ失敗しないよう安定した選択をすることも増えてきた今だからこそ、金銭的・時間的余裕の許す限りは舞台に限らず、色んなことに挑戦していけたらなと改めて思えました。

また再演で彼女たちに会える日を楽しみにしています。