他者のために生きる、を問う 舞台『宝飾時計』

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観劇してから時間が空いてしまったけど、キャストが好きな俳優陣だったので興味を惹かれて観てきた。

根本宗子さんの作品は映画『もっと超越したところへ。』で触れたのが初だったんですが、板の上だとどんな演出になるんだろうかと気になっていて。

まず時間軸の交差のさせ方が巧妙。1幕では展開が読めないのに2幕でだんだん点と点が繋がってくるのが楽しい。1幕ラストにこれは現実で起こっていることなんだと判明するシーンがあって(ネタバレは避けますが)えっ!どういうこと?!の状態で幕間入っちゃってワクワクした。

キャストは元々好きな方々が多くて、昨年夏以来の充希ちゃんは相変わらず長台詞をゴリゴリにこなしててかっこよかった!成田凌さんは元々フラットな演技の印象だったけど、本役ではさらに謎めいていてアンニュイな役似合うな〜と。小池栄子さんは声質の良さもさることながら間の取り方が笑いを誘うのよ!!上手い、上手すぎる。(元子役、現ママタレントという役柄の)彼女のセリフで個人的に好きだったのはママさんタレントブログでいつも辻ちゃんに次いで2位なところ、千年に一度の嗅覚を持ってるところ。絶妙に想像できて笑った。それに、まりっか〜!!ずっと生で観てみたくてやっと叶ったよ。乃木坂時代から好きだったので女優としての伊藤万理華さんを観てみたくて。ステージママに教育され、その期待に応えようとしてきたけどそうなれなかった彼女のまっすぐすぎる姿、魂の叫びに思わず胸を締めつけられた。

舞台装置や音楽の点で言えば、ステージを円形にしてぐるっと回しながら使う感じとかバイオリンが随所で差し込まれてSEやBGMとして使われるのが新鮮だった。
好きだった台詞は後藤さん演じる空気の読めない小池栄子さんのマネージャーが過去の自分を忘れたいと願い新しい名前になった人物に対して「僕は今の君しか知らないから新しい名前で呼ぶよ」と言ってたシーン。それ以上でもそれ以下でもなく今の存在を尊重しありのままを受け入れられる実直さ、欲しい。

話自体は2幕より1幕の勢いはあったかなとも思いつつ、2幕ではそれぞれが抱えていた悩みが一つ一つ吐露され、決して完璧ではないけどそれでも他者と生きていくことに対してのアンサーが描かれていた。

三者から見ればそんな人生辛くない?と思うようなことでも物事って複合的に絡んでいるし、その人が幸せかどうかなんて他人の物差しで測りきれないところにこそ繊細で脆い人間の愛おしさがあるのかなと。

ラストの充希ちゃんの青春の続き、かっこよかった。