他者のために生きる、を問う 舞台『宝飾時計』

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観劇してから時間が空いてしまったけど、キャストが好きな俳優陣だったので興味を惹かれて観てきた。

根本宗子さんの作品は映画『もっと超越したところへ。』で触れたのが初だったんですが、板の上だとどんな演出になるんだろうかと気になっていて。

まず時間軸の交差のさせ方が巧妙。1幕では展開が読めないのに2幕でだんだん点と点が繋がってくるのが楽しい。1幕ラストにこれは現実で起こっていることなんだと判明するシーンがあって(ネタバレは避けますが)えっ!どういうこと?!の状態で幕間入っちゃってワクワクした。

キャストは元々好きな方々が多くて、昨年夏以来の充希ちゃんは相変わらず長台詞をゴリゴリにこなしててかっこよかった!成田凌さんは元々フラットな演技の印象だったけど、本役ではさらに謎めいていてアンニュイな役似合うな〜と。小池栄子さんは声質の良さもさることながら間の取り方が笑いを誘うのよ!!上手い、上手すぎる。(元子役、現ママタレントという役柄の)彼女のセリフで個人的に好きだったのはママさんタレントブログでいつも辻ちゃんに次いで2位なところ、千年に一度の嗅覚を持ってるところ。絶妙に想像できて笑った。それに、まりっか〜!!ずっと生で観てみたくてやっと叶ったよ。乃木坂時代から好きだったので女優としての伊藤万理華さんを観てみたくて。ステージママに教育され、その期待に応えようとしてきたけどそうなれなかった彼女のまっすぐすぎる姿、魂の叫びに思わず胸を締めつけられた。

舞台装置や音楽の点で言えば、ステージを円形にしてぐるっと回しながら使う感じとかバイオリンが随所で差し込まれてSEやBGMとして使われるのが新鮮だった。
好きだった台詞は後藤さん演じる空気の読めない小池栄子さんのマネージャーが過去の自分を忘れたいと願い新しい名前になった人物に対して「僕は今の君しか知らないから新しい名前で呼ぶよ」と言ってたシーン。それ以上でもそれ以下でもなく今の存在を尊重しありのままを受け入れられる実直さ、欲しい。

話自体は2幕より1幕の勢いはあったかなとも思いつつ、2幕ではそれぞれが抱えていた悩みが一つ一つ吐露され、決して完璧ではないけどそれでも他者と生きていくことに対してのアンサーが描かれていた。

三者から見ればそんな人生辛くない?と思うようなことでも物事って複合的に絡んでいるし、その人が幸せかどうかなんて他人の物差しで測りきれないところにこそ繊細で脆い人間の愛おしさがあるのかなと。

ラストの充希ちゃんの青春の続き、かっこよかった。

なりたいあなたのままで キンキーブーツ2022

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プライベートがせわしなくて下書きに入れたまま年末になってしまった…10月中旬にキンキーブーツ2022観劇してきたので備忘録を残しておきます。観劇当時の自分が感じたことを忘れないためにも。

キンキーブーツ、正直観るまでは色々な気持ちが入り混じってたんですけど観終わって場内が明るくなった時、ああやっぱり観にきてよかったと思った。この作品が好きだなと。
私は日本版の初演と再演を観劇していません。なので先にご承知おきいただきたいのは三浦さんのローラが多くの人に愛されている魅力的なローラだなと認識してるうちの1人ではあるけれど、初演や再演を観てた方々とはキンキーブーツ2022に対して感じる部分に違いもきっとあることです。たぶん初演・再演を観劇した方の中でも今回悩んで観ることにした方、観ないことにした方もいただろうし。それぞれの選択に正解/不正解はないし、私が一個人として観てよかったという、あくまで2022年のキンキーブーツへの感想です。

この演目を初めて観たのは映画館で上映されたブロードウェイ版でした。当時の私はプライベートがズタボロ状態で食欲も趣味を楽しむ余裕もなかったので、元気づけてくれる作品を観たくて。池袋の映画館で暗闇の中スクリーンに映し出されるローラのパワーや輝きに圧倒された。ローラという存在の眩しさやRaise You Up/Just Beをはじめとした素敵な曲たちに出会えた当時のことを思い出すと勇気をもらった記憶が今でもブワッと蘇ってくる。ミュージカルの日本版については再演の時に評判がいいのはきいていたのですが、評判が入ってくる頃には観られず…。まだ観劇が趣味になる前だったのが本当に悔やまれる。

キンキー日本版の話題はその評価の高さと同時に悲しい部分と向き合わなければならないのもあって、最初に再々演が決まった時、生で観たい、ただどういう感情で観ればいいか少し戸惑いはある…という気持ちが混ざり合ってたのが正直なところです。キンキー日本版の初演や再演を観てた方はもっと複雑な気持ちだったかもしれない。それでもそういった評価をされる側面も含めて、カンパニーがまた動き出そうと決めてくれたことに勇気を感じ、私は彼ら/彼女らが作る2022年のキンキーブーツを観ようと決めました。

ただ、決心はしたものの観劇当日シアターオーブの幕が上がるまで期待と緊張の入り混じった胸の高鳴りが抑えられず…。初めにドン役の勝矢さんが出てきて、スマートフォン等の注意をしてくれるくだりがあるんだけど、ウェイトレスで観た時から変わらない勝矢さんのチャーミングな人柄(役柄?)に癒されてやっと気持ちが楽になった。

小池さんはチャーリーのちょっと頼りない感じも出しつつ、芯の通った歌声が響いていて素敵だった。ストーリーが進むごとにチャーリーの変化がみられるのも本作の魅力だなと思う。
城田さんは事前にゲネプロの動画を拝見しててその時は高身長+ヒールで姿勢を保つのが大変そうな印象を受けたんだけど、劇場で観たら全然違った。すらっと伸びた背筋、そして歌は数々のミュージカルで鍛えられてきただけあって訴求力もあり。舞台上にローラがいる、と思った。
ソニンさんローレンはまさにこんな人にやって欲しい!ってのを体現してたな…勢いがあってちょっと早とちりしちゃう感じとか、人間味があって好きなんだよね。
エンジェルスのみなさんもキラキラしてて美しくて、高いヒールでもブレないダンスがかっこいいのよ。

キンキーの好きな要素のひとつに数々のキャッチーなナンバーがあって(シンディ・ローパーありがとう)、テンポのいい曲も多いから日本語にすると難しそうだと思ってたんだけど、日本語と英語をバランスよく歌詞に混ぜてるのもよかったなあ。Spotifyでよく聴いてたからブロードウェイ版に耳が馴染んでたけれど思ったより違和感なく聴けた。

またいつか生で観劇する機会があれば、その時はローラみたいな人に少しでも近づけてたらいいな。


今年は人生の中で一番ミュージカルに触れた年だったからこそ、勇気をもらえたり、演者と一緒に踊りたくなるような作品って楽しいなと気付けた1年だった。日々辛いこともある中で素敵な作品たちに出会うたびまた頑張ろうと思えたし、幕が上がるよう尽力してくださった関係者の方々には感謝しかない。この言葉は自信をもって言えます。

観劇好きになってよかった、と。

心のビートを打ち鳴らせ! ヘアスプレー

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観劇してから1ヶ月以上経ってしまったけど、2022年の中でも観たかった作品のうちの1つだったミュージカル『ヘアスプレー』観劇してきました。感想を聞かれて最高って言うの単純すぎると自覚しつつ、本当に最高だったからそれしか言えない。それくらい楽しかった。大千穐楽から間が空いてしまったのは2回目で行く予定だった大阪公演が中止になってしまい、悲しくてなかなか書く気持ちになれなかったからです。(何回味わってもチケットが紙切れになるの辛い)
でもまたいつかくるかもしれない再演に希望をもちつつ、ヘアスプレーの魅力を少しでも知ってもらえたら嬉しいなという気持ちも込めて感想残す!

そもそもこの作品を初めて観たのは映画版で、なんて素敵な楽曲やキャラクターたちなの…!とそれはもうメロメロになってしまって。60年代のニューフロンティアを彷彿とさせるワクワク感、カラフルでラブリーな衣装やセットたち、差別に毅然として立ち向かう主人公のトレイシーや彼女の周囲の優しい家族・友人たちとどこをとっても魅力的なんですよね。

日本版ミュージカルが2020年に中止になってもうやってくれないのかなぁなんてしょんぼりしてたので、今回公演が決まった時は観劇にもハマっていてベストタイミングでありがとう!と速攻チケット取った次第です。

劇場については観劇ファンの間でも評判があまり…と聞いていたブリリアホールだったので席によっては厳しいなと思ってたんですが、今回は2階1列目のサイドめで手すりも気にせず観られた。歌詞がちょこちょこ聞き取りづらい時あったくらいかな。(これは劇場の作りのせいなのか…)

キャストは個人的に大満足!!最高オブ最高だと思いました。直美さんのトレイシーがTVで拝見してたコメディアン要素溢れる彼女とも一味違って、歌やダンスなどこれまでステージで培ってきた経験に加えて他の演劇舞台慣れしたキャストにも劣らない見事な主役っぷりで。
三浦リンクもかっこよさとおちゃめさとカリスマ性といいぴったりだったよ〜〜。彼のダンス目を奪われるなあと思ったらクラシックバレエされてたんですね。(最近テ◯ミュもチェックしてるので跡部様の片鱗も感じた…みうべ様…)
清水さんのペニーと平間さんのシーウィードも終始ラブラブで、ずっと幸せでいてくれ…と祈らずにはいられないかわいさだった。カテコでシーウィードがペニーの投げキッス奪ってたの見逃さなかったよ私は!
めいめいのアンバーもかわいかった…!!ハロプロわりと好きなので観る前までアイドル時代の彼女の印象の方が強かったんだけど、登場シーンから役者としてのめいめいのスキルの高さやキャラクターの確立具合に圧巻された。
トレイシーのパパママ、山口さんのエドナと石川さんのウィルバーも元気もらえるキャラでよかったです。2人とも優しくてさ、この親にしてこの子あり!って感じ。
メイベル役のエリアンナさんの歌唱シーンも力強くて魂に沁みて、かっこよかった…未来を信じ決して諦めない彼女たちの姿にぐっと心が掴まれる。

内容については映画版とちょこちょこ違うところがあって、ラストなんかはそうなるんだ!と思ったけどブロードウェイ版に準拠してるのかな。ブロードウェイ版も観たくなる。

ナンバーも英語の歌詞と日本語の組み合わせ具合が好きだったし、You Can't Stop the Beat流れてる間なんてほぼ泣いてて視界ぐちゃぐちゃな記憶しかない。笑う。演者やお客さん含め会場全体が幸せな雰囲気に包まれる作品だなと実感しました。

最近人生に悩むことが多くてうまくいかない…と凹み気味だけど、これがMy Wayだと胸を張っていけるよう私も頑張りたい。頑張るよ。

世紀末エンターテイメント フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~

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アタタミュこと『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』のミュージカル初日観劇してきたー!昨年初演時に話題になってた時はまだ観劇に本格的にはまる前だったので再演が決まって即チケット取りました。だって、絶対おもしろそうだったから…。
あと4月に観劇したメリー・ポピンズでの大貫さんの華麗なるアクロバットにも感動したので大貫ケンシロウ生で観たいなと思ってて。

原作を読んでからだいぶ時間が経ってたし復習する時間も取れなかったから開演前は細かいところ思い出せるかなとちょっと心配してたんですが、そんな心配ご無用だぜー!!くらいの勢いがあって楽しかった!
ストーリーの重要な部分(シェルターのところとか種籾のところ)はおさえつつケンシロウVSラオウまでわかりやすかったと思うので個人的には助かった。

初っ端から大貫ケンシロウは蹴りがまっすぐで速くて美しかった…!しなやかながらパワー溢れる大貫ケンシロウは他者の痛みをより機微に感じ取ってくれそうな雰囲気があったな、一幕ラストの迫力も北斗百烈拳もよかった。

三浦レイはまさかの客席を通って登場してきたので驚いちゃった。別作品の時も驚いたけど股下5mあるのかな?って錯覚するくらいスタイルよくて、繊細な演技がレイに合うなと。ワイヤーアクションも美しかった(本人のインタビューで高所恐怖症と知って驚いた、余裕そうにみえたので)

レイと絶妙な関係の清水マミヤも最初小柄な方だなと思ったんだけど、歌う姿は力強くてマミヤのイメージにぴったりだったな〜

平原ユリアはまあ皆好きになるわこりゃ…って思うくらい美しくて気高くて、ホール全体に響き渡るような歌声が良かった。プロジェクションマッピングで夜空に照らされる中でのソロ、圧巻。そして氷と炎のナンバー!あれは生で聴いてほしい。

植原シンも美しかったな、王子様のようなマントさばきが決まってた。シンは憎まれ役になってでもまっすぐにユリアを愛していたんだろうなと思える行動がなんか人間らしくて好きなんだよね…。あらゆる男たちを虜にするユリアという存在が凄すぎるとも言えるが…

そしてわりとシリアスな世界観の中で異彩な存在として君臨し、皆を笑顔にした伊礼ジュウザよ。伊礼さんの人柄とも合っててめちゃくちゃ好きだ!ヴィーナスの森のナンバーもまさに踊り明かしたくなるような曲調で楽しかった。そしてカテコでも植原シンをお姫様抱っこしてて最後まで自由度高めだったな。

予想外に良かったのが若手組(?)の山﨑リンと渡邉バット!2人ともここぞという場面でのソロのパワーが素晴らしくてかっこよかった。山﨑さんの安定感は抜群でこれからの活躍も楽しみ!

戦闘シーンだとケンシロウVSラオウはもちろん好きなんだけど、そのシーン以外で心奪われたのはトキVSラオウのシーンで。周りで北斗の拳知ってる人と話すと好きなキャラとして名前あがることが多いのがトキなんだけど、魅力的なキャラだよなあとアタタミュ観てても感じた。強くて優しいし!小西トキはそんなトキの要素を見事にみせてくれてグッときました。

福井ラオウも登場から黒王号(めちゃくちゃ大きい馬、強くて好き)乗ってきてくれて最高だったね、圧倒的な王の力を感じた。歌もパワフルでかっこいい曲が多くてさ、揺らぎなき信念のナンバーかっこよかった…

トキVSラオウのシーンはなんたってラオウの戦う者への敬意とトキの覚悟が見える一戦ってのがね、魅力的ですね。愛を知らないラオウがたった1人血の繋がった弟は大切にしてたのがわかる、身体に良くないとわかっていても無理をしてでも兄を止めようと決めたトキを無下にしなかったラオウがまた憎めない!そういう原作の熱量に通ずるものをしっかりみせてもらえて嬉しかったな。

ナンバーはわりとみんなで歌うものもあってアンサンブルの方々もそれぞれのキャラクターがみえていいなと思った。民衆も含めて戦うぞ!という力強さが作品全体の気迫を押し上げてた気がする。


唯一気になったのはマイクがポップノイズっぽく感じる時があったことかな。私の席がいまいちだったのか、マイクや劇場の関係でそういう風に聞こえたのか謎ですが…。

それでも演者の方々の魅力が100倍あるから全然楽しめましたね。

次再演するときはぜひ生オケでど迫力世紀末エンターテイメントになるのを楽しみにしています。

幸せのありかはここに ダディ・ロング・レッグズ

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気づいたら夏も終わっていて、なんだか終わるたびにあっという間で儚いなあといつも思います。
儚いといえば、そう、ダディ・ロング・レッグズの公演もあっという間に終わりましたね。力技で話を繋げてすみませんが…

無事に幕が上がってよかった〜という嬉しい気持ちもありつつ、やっぱり生で観てみたかった…と思っていたところ、そんな私(と同じように劇場へ行けなかった方)へのありがたい千穐楽公演の配信という朗報が!

無事に配信で鑑賞できたので遅くなったけど初ダディ鑑賞の感想を。元々作品が気になっていて今年公演するなら観たいなと思ってたんですが、坂本真綾さんが演じていたジルーシャを今年は上白石萌音ちゃんが演じるとのことで初鑑賞かつイレギュラーな感じにはなりました。
結果的には萌音ジルーシャ観たことで真綾ジルーシャもめちゃくちゃ観たくなったのとこんな内容なんだな!と作品について今回知ることができたので観てよかったなと思います。

本名や素性がわからないミスタースミスとの邂逅から始まる手紙のやりとり、手紙を書く・読むという行為をお互いにしながら声を重ねていく表現が好きだったな〜!どんな気持ちでジルーシャが書いているのか、どんな気持ちでジャーヴィスが読んでいるのか、たった2人の世界をこっそりみせてもらってるようで観ててワクワクした。

初めて1人部屋に住むジルーシャが「これでやっとジルーシャアボットと知り合える機会ができたわ」と自分だけのための時間について語るシーンなんかは文学的でいいなあと思った。こんな素敵な子ジャーヴィスが好きになるのわかるわ!

だんだんジルーシャに(いい意味で)翻弄されたり嫉妬するジャーヴィスもかわいかった。自信家で癖の強い彼がこっそりジルーシャに会いに大学来ちゃうとことか、ジミーに嫉妬して秘書のふりして行かせないようにするとことか。あなたの方が年上ですよね…?とかは思いつつもかわいい。

世界を知りたいジルーシャに対して、彼女がそんな好奇心をもつことを嬉しく思いつつ、同時に寂しい気持ちも抱えるジャーヴィスってのがまたいいよね。芳雄ジャーヴィスは高貴なのにぐぬぬ…って振り回されるのが似合う。(どことなくご本人のイメージと重なる部分もあるのかもしれない)

この作品のメインソングである幸せの秘密、萌音ちゃんもカテコで言ってたけど元気がない時に聴くと心に寄り添ってくれるような素敵な曲ですごく好きになった…萌音ちゃんの優しく語りかけてくれる歌声よ。真綾さん版もYouTubeで聴いたけどこちらももちろん素敵でした。真綾さんの声質好きすぎる(きっと多くの人が好きですが…)

邪魔なプライドは捨てて、落ち込んだ日々を嘆かない。こない未来を恐れない。

地に足をつけて、幸せと向き合うことの大切さを教えてくれる良曲…!


真綾ジルーシャ観たくなる

リプライズでセットの箱たちを動かして2人で月を見つめながら、幸せはここにある(お互いといる時間)だと気づくのがもうね、心が清浄化された。あのシーンだけでマイナスイオン相当出てたね。

ラストの方の萌音ジルーシャが怒った時の芳雄ジャーヴィのあたふたっぷりもよかったな〜
嘘を明かした時に半ば逆ギレしながら再度告白するジャーヴィスを受け入れるジルーシャの懐の大きさよ!萌音ジルーシャは幼く見えるけどジャーヴィスに対して強そうなギャップ感じられるのがよい。

真綾ジルーシャも違った良さがあって魅力的なんだろうな。見た目的にはよりお姉さん感あるのかなと思うので、いつか生で観られるのを楽しみにしてます。

実はミュージカルを配信で観たの自体も今回が初めてだったんですが、好きな時間に何回も観られるというのも悪くなかった!おうちで観劇もいいなと思えたダディ配信でした。

戦禍で紡がれる夢と愛 ミス・サイゴン

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8/31に東京公演が千穐楽を迎えたので、初ミス・サイゴンの感想を。まずは厳しい状況の中頑張ってくださっていたカンパニーの方々にお礼を言いたい…!

観劇したのは7月と8月の2回。2020年中止になった時にニュースをみていたのもあり、2022年の観劇にはまったこのタイミングで再演が決まってチケットを取れたのはうれしかった。そして30周年おめでとうございます!

作品を観るにあたりストーリーの概要は把握してたんですが、今回が人生初サイゴンだったのでラストはそこで終わるんだ…!と衝撃でした。むしろ初見で驚かない人の方が少なそう。ラストを観てから命をあげようを改めて聴くとより意味合いがずっしりと感じられる…
ただ、こういう歴史があったことや、戦争に翻弄された市井の人々の存在をよりリアルに感じられたのは観劇したからこそかなと思います。

30年続くだけあってどのシーンもセットは豪華!オペラグラスで細かく観たいのに目が足りないくらい隅から隅まで凝ってる。キャストもたくさんいて華やかだしバンコクの街並みとかドラゴンダンサーのくだりとかは見応えあったなぁ。

中でもサイゴン陥落の舞台の使い方なんて圧巻だし、なんといってもヘリコプターのシーン。あれ実物大のサイズ感ですよね?音響、ライトの使い方も相まって本当に帝劇にヘリコプターが降り立ってる気持ちになった。生オケも最高〜!作品に奥行きが出るし迫力が桁違いで、音楽の重要性をひしひしと感じる。
舞台観劇はこういう演技・美術・音楽などのプロたちの集大成を生で浴びられるのが魅力の1つですね。

今回キャストスケジュールとにらめっこしてなんとか2回観劇してみたんですが、同作品でもそれぞれ印象が異なっていて発見が多かったのでメモです。

昆キム×海宝クリス×伊礼エンジニア

  • 昆キム
    序盤本当に幼い少女のように見える。世間をまだ知らない清らかな少女の雰囲気が歌や表情から出てた。でもタムが出てきた瞬間(子供という存在ができて)から変化が出てくるのが面白い!母性というか優しいんだけど、力強さもあり。子守唄聴いてるような気持ちにもなるし、力強さに圧倒されそうな時もあるのが不思議。クリスに会いに行く前の回想シーンが辛い。海宝さんと共演も多いからか歌の相性がいい印象だった。
  • 海宝クリス
    予想してたけど爽やか!最初ストーリー読んだときはクリスという男にあまりいい印象を抱けず、いやいやこの男は…!と思ったんだけど、海宝クリスを観ていい意味でがらりと印象が変わった。彼もまた戦争に翻弄されて、誠実さと弱さと辛さの間で揺れ動いていたんだろうなと思わされたんだよね。あの瞳で愛の言葉を伝えられたキムが何年も待ってしまうのもなんかわかる気がする。
  • 伊礼エンジニア
    「生き延びたけりゃ(What A Waste)」とても似合う!伊礼さんにやっと笑う時に片方の口角が上がるの最高。もっとエンジニアってしたたかさ100%みたいな男だと思ったけど、伊礼エンジニアは軽薄さも持ちつつ、わりと人情味あるよね。なんだかんだタムかわいがってそうなとこも好き。派手好き、アメリカンドリーマーだからこそ舞台上でも他のシリアスめなキャラたちとの濃淡はっきりしててアクセントになる。伊礼さんご本人もハーフで設定に合ってるなと思った。
  • 上原ジョン
    軽くチェックしてたくらいだったので想像以上によかった!最初はジョン女癖悪いな…と思ってたんだけど、後半になると力強い歌声に魅せられ、クリスに対する思いやりも感じられた。後悔と責任を歌ったブイ・ドイがとても印象的。中央のモニターに子供たちの映像が出るのが目に焼き付いてる。
  • 知念エレン
    強い女性だった。子供だったら、と他人と夫の子供を育てようと思える肝。エレンって戦争帰りの夫が後遺症に苛まれるのを横で優しく支えてくれてた存在で、彼女に非はないわけで。(もちろん誰に非があるわけでもなく戦争が一番悪いんだけども)キムとは対照的な存在としての描かれ方がうまいなと感じた。
  • 西川トゥイ
    あまりチェックしてなかったけど、執念と愛の男って感じでよかった。彼は結婚の約束してからずっとキムのこと好きだったわけである意味一途の権化みたいな男なんだけど、それが執念にもなってるんですよね。一方で彼が倒れた時に部下が駆け寄って悲しむ様子を見る限り、慕われてたんだろうなとも思ったし。彼もまた戦争がなければこんな風にならなかった、キムとの未来もあったのかなとか少し思った。


高畑キム×サンウンクリス×市村エンジニア

  • 高畑キム
    他作品で歌ってる時やTVの時よりもさらに抑揚をつけて歌ってる感じがした!普段は力強さが出るタイプの歌い方だなという印象があってそれが魅力の一つでもあるんだけど、今回は少し歌い方を変えてたというか、シーンによって調整してるような感じ。意識して変えてるのかな。あえて抑え気味にすることで、キムの脆い部分と芯の強い部分の強弱がくっきりとみえて、より一層キムという人間の人生を感じられた。
  • サンウンクリス
    鍛えてらっしゃるからか守ってくれそう感が強い。海宝クリスが儚さ強めなのに対して、サンウンクリスは実直さ強めな印象だった。彼は感情がグッと高ぶるシーンで特に迫力あったので、ラストの慟哭が響いてきた。あと2回目で思ったけど神よ何故?(Why God Why?)はわりと序盤なんだな。転調するところが好き。クリスって演じる人によって少しずつ印象が異なるのが興味深くて、複数回観に行くとよりそれを感じた。
  • 市村エンジニア
    さすがの貫禄で遊び心ありありのエンジニア。アメリカンドリームを腹の底に滾らせつつ、いってきま〜すの軽い感じで笑顔になっちゃったし、くそっ!の一言も似合うのが不思議だよねえ。アメドリの歌い方がセクシーだしどんどんテンポアップしていく曲調に合わせてこちらの気持ちも上がる。カテコでも投げキッスしてておちゃめだった。まさにエンジニアの化身だなあと思う。
  • 上野ジョン
    上原ジョンと印象が全く逆で面白い。語りかける系だった。ためて歌う感じで、歌詞のひとつひとつがこちらに話しかけるようなニュアンスなんだよね。彼がしてきたことへの罪深さや後悔が歌に表現されていた。ブイ・ドイやっぱグッとくるというか引き込まれる曲だなあと思った。

※2回とも知念エレン、西川トゥイだったのでこちらは省略

この作品で誰に一番感情移入できるかと言われたら正直難しいところでした。観劇するタイミングによっても変わりそうだし、5年後10年後に観たらまた違う感想になりそう。

戦争って正しさが機能しなくて、時代背景も1970年代なので今を生きる私たちにとっては当時の倫理観との差に驚く部分もあるなと思うんだけど、そこを含めてもサイゴンを上演する意味はあるかなと。

Welcome to dream landから始まるエンジニアの夢、キムとクリスの愛、タムという存在、戦争に翻弄されながらも紡がれる彼らのまさに夢と愛の話。それがミス・サイゴンという作品の魅力なのかなと知ることができた2022年の夏でした。

創造と科学の功罪を問う NTLiveフランケンシュタイン

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NTLiveのフランケンシュタインの上映がかかったので観てきた。NTLive観るようになったのが最近なのでちょこちょこ過去作品を再上映してくれてありがたい〜〜!

本当はベネディクト・カンバーバッチ(以下BC)怪物版もジョニー・リー・ミラー(以下JLM)怪物版も観たかったけど、スケジュールの都合で今回はBC怪物版のみ鑑賞。

本編前にダニー・ボイルやキャストのインタビューがあるんですが、BCが怪物を演じるにあたって子どもやリハビリしてる方の動きを参考にしたと言っており、興味深かった。身体を意識して使うこと、というのを本編冒頭10分ほどの怪物誕生シーンで観客はみてるわけですが、まあ引き込まれること…。手足の関節の向き、重心のかけ方、今初めてこの大地に生まれ落ちましたか?とこちらに思わせるほどの演技に息をのんでしまう。BCの怪物並みの演技力よ…

本作は役を入れ替わり演じることで作品としてより面白くなる相乗効果を狙ったそうなんですが(本人たちもセリフの口調が似てきたりすると言ってた)、ダブルキャストじゃなくて入れ替わりというのが面白いなと思う。BCフランケンシュタイン役も絶対似合うだろうし、動画でちらっと観たJLM怪物版も迫力あった。JLMの怪物も相当見応えありそうだしもう1つのバージョンもみたかったな〜

さて、ストーリーについて。
原作は読んだことなかったんですが、ホラー漫画家の伊藤潤二先生が原作を元にコミカライズしたものを読んだことがあったので内容はうっすら覚えてた。

 

こちらも原作寄りでおすすめ!怪物が怖い!



ざっくり説明しておくと野心家な科学者ヴィクター・フランケンシュタイン(設定だと大学生なんだ…?!)が死体を繋ぎ合わせた怪物を創造し命を吹き込んだものの、怪物の誕生を前にしてあまりの恐ろしさに逃げ出し、再会した時には知性を持った怪物が創造主に反乱してきた…みたいな話なんですが。(ざっくりにも程がある)

“新たな生命を創り出す”という禁忌について描かれた200年前の古典的作品でありながら現代まで映画や舞台になってるのは、やはり原作の完成度の高さだろうなと今回観てて感じた。
あと創造主であるフランケンシュタインと被創造物である怪物の独特な関係性もこの作品の魅力のうちの1つですね。互いの存在を憎み合っているのに、互いが唯一の理解者であり、そして世界でたった2人この秘密を共有してる彼らにしか分からない感情。そこにたとえ正しさが伴っていなくても、唯一無二の関係性が物語のラストまで私たちを揺さぶってくるという…
科学や哲学など様々な問いかけとは別の、物語におけるキャラクターの関係性という観点での魅力があるなと思う。

メインキャラクターの1人である怪物はその見た目から人々に嫌われ孤独感に苛まれるんだけど、盲目の博識な老人との出会いでそれが大きく変化するんですよね。外見によって虐げられない存在との邂逅を経て、言葉を知り感情を学び知性を得る。老人との出会いや読書を通じて怪物に湧き上がる感情が“人間と同じように幸せになりたい”なんだよな…はたしてその感情を抱くことが彼にとって幸せなのか、観ながら考えてしまう部分ではあるけれども。

その一方でもう1人のメインキャラクターであるフランケンシュタインは家柄もよく婚約者もいるという状況ながら、取り憑かれるように怪物を創造していたことを考えるとよっぽど怪物よりも狂気的な気もするんだよな。ただ、生命倫理に背き怪物を生み出した故の苦しみや孤独感はある種、盲目の老人を除いて誰からも受け入れられなかった怪物と似ている部分でもあるかもしれない。

人を人たらしめるものはなんだろう、怪物にも身体があり、感情があり、人との違いはどこにあるんだろうかという問いに対し、臨場感をもって今一度向き合わされる体験をできるのは本作ならではだと思った。

 

それからNTLiveはセットも毎回凝ってて大好きなんですが、今回も例に漏れず舞台装置だけで見応えありでした!
序盤で機関車出てきたり、上から木の板降りてきたなと思ったら湖にかかる橋になったり。結婚式で客席の通路を花道にしてたのもよかったなあ。あとはなんといってもセンター天井にある無数の豆電球が美しかった。


f:id:bcis014:20220825171022j:image汽機関車出てくるところ結構びっくりした

上質な演劇を映画館で気軽に楽しめる良さがあるのでNTLiveの話できる人がこれからも増えるとうれしいな。